経営・管理

1.在留資格該当性

(1)事業の経営(取締役・監査役等)又は管理(部長・支店長等)の活動が該当します。取締役等として登記されているだけでは足りず、当該活動に実質的に従事する必要があります。
 例えば、1人の外国人が100%株主兼代表取締役で会社を設立し、不動産賃貸事業を営む場合、従業員を雇用せずに不動産の管理・会計等の業務全般を外部委託しているのであれば、日本において代表取締役として活動する必要は無いと判断され、在留資格該当性が否定される可能性が高くなります。
 複数の外国人が事業の経営又は管理に従事するという場合,それぞれの外国人の活動が「経営・管理」の在留資格に該当するといえるためには,当該事業の規模,業務量,売上等の状況を勘案し,事業の経営又は管理を複数の外国人が行う合理的な理由があるものと認められる必要があります。
(2)事業の継続性が必要なので、当該事業が安定して営まれるものと客観的に認めることができず、決定する在留期間(最低1年)の途中で事業が立ち行かなくなる等在留活動が途切れることが想定される場合には、在留資格該当性が否定され不許可となります。
 この点、事業の経営に従事する場合は、管理に従事する場合と異なり、在留資格該当性以外の要件として、「経営又は管理について3年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む)」は不要ですが、相当の経験も学歴も無い方が経営に従事する場合には、事業の継続性が否定される可能性が高くなります。
 事業の継続性は、新規事業の場合、主に事業計画書及び当該証明資料(取引予定契約書等)で証明することになります。
 これに対して、決算実績がある会社の場合は、実績決算を基に事業の継続性を判定することになります。債務超過が2年以上続く場合、不許可の可能性が高くなります。
(3)「技術・人文知識・国際業務」の活動と重複する場合は、「経営・管理」の在留資格が決定されます。また、病院の経営者になるためには資格は不要なので、たとえ医師が経営者になる場合でも、「医療」ではなく「経営・管理」の在留資格が決定されます。
 これに対して、弁護士・公認会計士等の資格を有していなければ行うことができない法律事務所や会計事務所の経営する場合は「法律・会計業務」の在留資格に該当することになります。

2.上陸許可基準

(1)事業所の存在又は確保
 事業所は、他者と共有することは認められず、他の区画と壁等で区別されていることが必要です。したがって、自宅兼事務所の場合、事業目的専用の部屋を有していること等が必要となります。
 また、月単位の短期間賃貸スペース等を利用することは、ジェトロ等が運営するインベキュターが支援・提供している場合を除き、認められません。
 すでに事業を開始している場合は、事業所が「存在」していることが必要で、事業所の賃貸借契約書と写真を証明資料として提出する必要があります。
 これに対して、まだ事業が開始されていない場合には、「確保」で足ります。「確保」の証明資料として、賃貸借契約書の提出は不要で、賃貸借契約申込書等の賃貸検討している施設の詳細及び不動産会社と交渉中であることを明らかにする資料の提出で足りることとされています。
 この点、日本に居住している外国人が「経営・管理」に変更申請する場合、「経営・管理」の在留資格を取得するまでは、「収入を伴う事業を運営する活動」は禁止されているので、必然的に、「事業が開始されていない場合」に該当することになり、事業所の「確保」で足りることになります(資格外活動許可を得て週28時間以内従事する場合を除く)。ただし、個人事業で経営する場合を除き、変更申請の時点で会社が設立されていることは必要なので、自宅等を本店所在地として会社を設立して、変更申請をすることになります。
 これに対して、日本に滞在していない外国人には、「収入を伴う事業を運営する活動禁止」のルールは適用されないので、「経営・管理」の在留資格を取得する前から、会社を設立して事業を開始することが可能となります。したがって、当該外国人が「経営・管理」の在留資格認定証明書交付申請をする時点で事業を開始している場合には、事業所の「存在」が要求されることになります。ただし、非居住者の外国人の場合は、居住者の外国人と異なり、日本で会社設立することは容易ではないので、会社設立する前に「経営・管理」(ただし在留期間は原則4カ月)の在留資格認定証明書交付申請することが認められており、その場合には「事業を開始していない場合」に該当することになるので、事業所の「確保」で足りることになります。
 「短期滞在」で日本に滞在する外国人にも、「収入を伴う事業を運営する活動禁止」のルールは適用されます。ただし、日本法人の経営者が商用で来日する場合、短期間で、当該法人から役員報酬が支払われていなければ、「経営・管理」ではなく「短期滞在」に該当するとされています。
(2)事業規模の要件
 下記のいずれかに該当することが必要となります。
 ア 日本人又は就労制限の無い在留資格(「永住者」「定住者」等)を有する常勤職員が2人以上雇用されていること
 イ 資本金の額が500万円以上であること
  資本金は、事業に使われるか、又は、会社の資金として実際に存在している必要があります。したがって、当事務所では、「事業用の支出の領収書の合計+預金残高=500万円以上」であることを証明する資料を提出することにしており、証明を容易にするために、資本金は500万円ギリギリではなく、多めにすることをお勧めしております。
  また、資本金の出所も証明する必要があります。留学生は、就労を禁止されているので、「経営・管理」へ在留資格変更申請する場合は、通常、親御さんから資本金を出資してもらうことになり、親御さんの収入を証明する資料を提出することになります。
 ウ ア又はイに準ずる規模であると認められること
  個人事業主が、当該事業を営むために500万円以上投資している場合等が該当します。この場合の投資は、資本金の場合と異なり、実際に事業所の確保・職員の給与等にすでに費消したか、費消することが確実である必要があります。したがって、1人で事業をする場合でも、個人事業でなく、会社設立をすることをお勧めします。

3.株式会社と合同会社の違い

 会社を設立する場合、通常は、株式会社又は合同会社を設立することになります。両会社は、出資者が会社の債務について責任を負わないという点で共通します。しかし、株式会社は大規模な会社向けであり、合同会社は小規模な会社向けであり、主に下記の差異があります。
(1)会社設立時、株式会社は定款の認証が必要で公証手数料として約5万1千円かかるが、合同会社は定款認証不要のため当該費用はかからない。また、登記に必要な登録免許税は、株式会社は15万円だが、合同会社は6万円で足りる。
(2)役員の任期は、株式会社は最長で10年で、たとえ同じ取締役が継続して就任する場合でも、重任登記をする必要があり費用がかかる。これに対して、合同会社の場合は、役員の任期は無制限である。
(3)株式会社では毎年決算公告義務があるが、合同会社は当該義務は無い。
(4)株式会社では、出資割合に応じて議決権及び配当が付与されるが、合同会社では、定款で異なる定めをする場合を除いて、出資割合に関係なく、出資者は平等に議決権及び配当を受ける権利を有する。

4.外国人(非居住者)の会社設立

 会社を設立するためには、日本の役所が発行する印鑑証明書が必要で、かつ、自己の個人名義の銀行口座に資本金を預入する必要があります。しかし、非居住者の外国人は、居住者の外国人と異なり、日本の役所で印鑑証明書を取得することも、日本の銀行に口座を持つこともできません。したがって、非居住者の外国人は、下記の方法を取ることになります。
(1)印鑑証明書に代わるものとして、自国の政府又は公証人が発行したサイン証明書等を取得する。
(2)日本の居住者から資本金を預け入れる銀行口座を借りる。ただし、他者の銀行口座に500万円以上のお金を一時的にでも預けるのはリスクがあります。そこで、当事務所では、まずは会社設立費用と同額程度の少額の資本金で会社設立をし、会社の銀行口座を作った後に、当該口座に資本金を追加で預入して、資本金を500万円以上へ増資することをお勧めしています。
    ただ、最近は、会社を設立しても、会社の銀行口座を作れないことが多くなってきたので注意が必要です。
 なお、日本の銀行の海外支店の口座を保有している場合は、当該口座に資本金を預入することも可能です。

「経営・管理」及び会社設立の費用

サービス内容 基本報酬(税別) 備考(法定費用等)

在留資格変更、
認定証明書

18万円
(1※)

印紙代4千円(変更のみ)
英訳料金別途5万円

株式会社設立

8万円

法定費用約20万円
英訳料金別途4万円

合同会社設立

7万円

法定費用6万円
英訳料金別途3万円

外為法の届け出

2万円

会社設立の出資者が非居住者の場合

在留期間更新

3万円
(2※)

印紙代4千円(変更のみ)
英訳料金別途1万円

1※ 着手金8万円、成功報酬10万円
2※ 理由書又は追加書類の作成が必要な場合は、成功報酬1万5千円別途必要

 

法務省発表資料

福岡市スタートアップビザ(外国人創業活動促進事業)